日本に暮らしていると、ふとした瞬間に「えっ、今ので警察呼ぶの?」と驚くことがある。
まるで「ちょっとした出来事=警察出動」という公式でもあるかのようだ。
ある日、テレビをつけると、警察官数人と消防隊員らしき人たちが、一匹のイノシシを本気で追いかけていた。
その必死な姿に、思わずコーラを吹き出しそうになった。
また別の日には、タヌキ一匹を囲んで奮闘する警察官たちの映像がSNSで拡散されていた。
さらに新聞には、「サルがマンションに侵入!」という見出し。もちろん、出動するのは警察である。
いやいや、日本の警察、なんでも屋さんなのか?
それとも“動物園の出張所”なのか?
──そうツッコミたくなるほど、なんでも出動してくれる。
そして、もう一つ驚くのは人間の場合だ。
外国人が数人で話していて、少し声が大きくなるだけで、
「うるさい外国人がいる!」と通報されることがある。
たとえ犯罪ではなくても、警察はちゃんと来てくれる。
日本の治安が良い理由が、少し分かった気もする。
ただ、外国人としては、正直ちょっと緊張してしまう。
ベトナムでは「ナタを持って追い払え!」
一方、ベトナムでは──
イノシシが出た?
「ナタを持って追い払え!」
サルが来た?
「バナナをやっとけ。下手に手ぇ出すなよ!」
基本的に、警察を呼ぶのは「命に関わる重大事件」のときだけ。
イノシシやサル程度なら、近所のおじさんたちが棒を持って出てきて、あっという間に解決してしまう。
通報よりも、まず「動く」が基本なのだ。
つまり、日本では警察は“市民の万能サポーター”。
ベトナムでは“最後の切り札”。
どちらが良い悪いではなく、これは文化と社会制度の違いである。
「怖い」ではなく、「平和」の証
ただ、正直に言うと──
タヌキ一匹を囲んで本気で動く警察官たちを見たとき、
「ああ、これが“平和”ってことかもしれない」と思った。
もしベトナムで同じ光景があったら、きっと通報よりも笑い話になっているだろう。
でも、日本では本気で守ろうとしてくれる。
それは、「命」や「秩序」だけでなく、「安心感」まで守ろうとする文化の現れなのだと思う。
📘この記事は、書籍
『異文化の鏡に映る日越の日常40話』
より再構成したものです。
日本とベトナムの“違い”を笑いながら考えたい方におすすめです。





















