社会

ベトナム人実習生に対する実習中の妊娠・出産を勧める記事は直ぐにやめるべき

失踪(不法滞在)や万引き等といった日本にいるベトナム人の実習生・留学による問題は、昔から存在しています。この数年の間ベトナム人の急増でこれらの問題も増えてきて日本の警察と入管は対応するのに大変になっています。これらの問題に加えて、最近は「技能実習生の妊娠」も問題になっていて話題になっています。今回はこの技能実習生の問題について考えたいと思います。

まず、私が知っている限りではベトナム人実習生の妊娠問題は昔もありました。私が通訳していた15年前から色々な妊娠のパータンがありました。来日する前から妊娠して日本に入国してから発覚した場合もあれば、研修中に彼氏ができて妊娠してしまった場合もあります。又、日本人の上司との性行為で妊娠してしまった実習生の子もいました。ニュース等に出てこなかったのは本人と管理団体である組合と会社が上手く解決したためでした。しかし、昔は(最近ニュースにも取り上げられたような)実習生が出産した子どもを「捨ててしまった」事件はなかった為に、実習生の妊娠・出産はあまり問題にならなかったのです。性格に言えばあまりマスメディアに問題としてされなかっただけです。関わっている企業と組合では実習生が妊娠すれば頭を痛める問題になってしまいました。


この実習生の妊娠に対しては、人によっては反対、賛成、中立になると思います。十人十色なので、同じ問題に対して人々の意見が分かれるのも理解できます。又 同じ人が同じ問題に対して違う時に違う見方を見せているのも珍しくないです。なので、当記事を読んでいる皆さんはこの実習生の妊娠に対して私とは違う見方を持っていても私の書いた内容に対して怒らないでくださいね!
それでは本題に戻ります。なぜか分かりませんが、最近実習中の実習生の妊娠・出身の権利を主張する記事が増えて来ました。同時に実習生制度も批判されています。日本は民主主義の国なので、実習生制度が悪いなら、勝手に批判すればいいです。又、人権という観点からすれば確かに実習中の実習生でも妊娠.出産する権利はあります。実習生の妊娠.出産の権利の主張も実習生制度に対する批判も理屈上は何の問題もありません。すべては筋が通っています。


しかし、上記の権利主張は、適切ではないと私が考えています。というのは、技能実習生制度は日本の企業以外に、外国人と外国の企業も関わっているのにもかかわらず、殆どの記者は、外国側の事と実際現場で起こったことを無視して、日本国内の建前上の利権のみを踏まえて話を展開しているからです。


確かに実習生にも妊娠.出産する権利はあります。しかし、この権利は建前上の事です。日本ではこの類の「建前上の権利」は多いと思います。例えば、「恋愛の自由」ですが、社内恋愛は禁止する企業さんも結構存在しています。外国人にも人権がありますが、色々なところで「外人」だという理由で差別されています。つまり、建前上と現実の世界とは異なっています。ベトナム人実習生には出産するという人権がありますがが、受け入れ企業さん側も「迷惑を掛けられない権利」を持っていることを、ベトナム人実習生の妊娠・出産の権利を主張している記者の方には忘れないでほしいです。研修計画で入社した子が、途中で妊娠.出産することになれば、その研修計画をストップさせなければなりません。又実習生が出産した時の面倒にも企業さんが多少関わることになりますので企業さんの負担は大きいです。


(ベトナム人)実習生の妊娠.出産の権利を主張するのは、日本の中.高生の妊娠.出産の権利主張と同じだと思います。もし、ベトナム人の実習生が妊娠・出産した時、受け入れ企業さんの負担を理解できなければ、自分の娘や姉妹が現役の中・高生で妊娠・出産したことを想定すればお分かりなのです。「妊娠・出産はあなたの人権なので中学生・高校生でもどんどん子どもを産んでください」という人は少ないと思います。なのに、実習中のベトナム人実習生に対しては「あなたの人権なので産んでもいい」と記事を書いて訴える方は無責任なのです。
人権等といった格好いいことをいう前に、実際の問題として実習中の実習生が妊娠・出産した場合、本人とその家族がどれ位こまっているか、又、その実習生を受け入れている企業さんがどれ位大変であるかを考えた方がいいです。実習生が出産するために、仕事を辞めれば、その仕送りを受けているベトナムにいる家族が大変です。又、受け入れの企業さんは生産計画に支障が出てしまいます。妊娠・出産時、実習生の本人が周りの人達に迷惑を掛けず、自分一人で出来れば、権利を主張してあげてもいいのですが、このように、周りに迷惑を掛けているので、権利をいう前に、その責任を考えてほしいです。


実習生が実習中に妊娠・出産することを応援するような記事の良くない影響はもう一つがあります。それは対象の記事がベトナム語に翻訳されて、ベトナム人の実習生の子らがそれを読んで「子どもを産んでもいいです」「子どもをお産みください」と日本の新聞が応援してくれるので大丈夫だと思い、子どもを産む実習生が増えたら、企業さんも本人も大変なのです。


本当にベトナム人実習生のことを考えているのであれば、人権等といった非現実的な事よりも、実習中に妊娠・出産したら、本人、その家族と受け入れ企業等がどのような困難に直面しているのかを調べて伝えてあげた方がいいです。本当にベトナム人実習生のことを考えているのであれば、研修中における妊娠・出産を勧めるような記事は直ぐにやめなければなりません。

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