エッセイ・感想

ベトナム人は本当に“犯罪者”なのか?──報道と現実のあいだで

毎日のようにニュースで耳にする「ベトナム人が逮捕された」という言葉。
それを見て、「やっぱり」「またか」と感じたことはないだろうか。
だが、その印象はどこまで“現実”なのだろう?
この文章では、報道が作り出すイメージと、実際のデータが示す現実を、冷静に見つめ直してみたい。


1. 毎日のように流れる「ベトナム人の犯罪ニュース」

「ベトナム人が万引きで逮捕」「不法滞在で摘発」「白タク営業で逮捕」──
こうした見出しを目にしない日は、ほとんどありません。
テレビ、SNS、ラジオ、ニュースサイト……どこを見ても「またベトナム人が」という言葉が流れ、私たちの日常に当たり前のように入り込んでいます。

その結果、「ベトナム人=犯罪者」という印象が少しずつ刷り込まれていきます。
「怖い」「危ない」という感情が生まれるのは、決して不自然ではありません。
自分とは異なる文化の人が事件を起こしたら、誰でも不安になります。
しかし、その“怖さ”が、いつしか「すべてのベトナム人」への偏見に変わることが問題なのです。


2. データが語る「現実」

感情ではなく、数字で現実を見てみましょう。
2023年、日本に住むベトナム人は約56万人。
そのうち、刑法犯として検挙されたのは約4,000人──率にして0.7%前後です。

一方、日本人の検挙率は約0.15%
数字だけを見れば、ベトナム人の比率は高く見えます。
しかし、街ですれ違う人の中で「犯罪者」に出会う確率で計算すると、
ベトナム人のそれは0.003%ほど。
つまり、日本で出会う犯罪者のほとんどは日本人
なのです。

ニュースで目立つから「多く見える」だけ。
報道が過剰に繰り返されることで、現実とのギャップが広がっているのです。


3. 一人の過ちで全体を裁けない

一人のベトナム人が万引きをした。
そのニュースが広まり、「またベトナム人か」と言われる。
すると、何の関係もない数十万人のベトナム人まで、同じ目で見られてしまう。

想像してみてください。
もし海外で日本人が事件を起こしたとき、「やっぱり日本人は危険だ」と言われたら、どんな気持ちになるでしょう?
国籍で人を一括りにしても、何の解決にもなりません。
必要なのは“敵意”ではなく“理解”です。


まとめ

犯罪は、どの国にも一定の割合で存在します。
問題は「誰が」ではなく、「どうすれば防げるか」です。
報道に流される前に、数字と現実を見てほしい。
そして、偏見のフィルターを外したときに見える“普通のベトナム人”の姿を、知ってほしい。


📘 本稿は、書籍『ベトナム人は“犯罪者”なのか?──その偏見と現実
に収録された第1章・第2章をもとに再構成した要約版です。

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